夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
私は結婚当初から春臣さんの秘書をしている。
細かい雑務はもちろん、事務処理やスケジュール管理、各社とのアポイントを取ったり会議の内容をまとめたり、なにかとやることが多い。
特に今日は他社との打ち合わせがあり、予定よりかなり長引いてしまった。もちろん今後の経営に生きるいい打ち合わせにはなったけれど、行うつもりだった仕事をその日のうちに終えることができなくなってしまったのだ。
「差し込みで入ったお話もありましたし、春臣さんも確認したいことがあるって言ってましたよね?」
「そういえばそうだったな」
忘れていたような顔をしているけれど、おそらくは振りだろう。
もともと春臣さんは秘書を雇っていなかった。スケジュールはすべて頭に叩き込み、自分のことは基本的に自分でするようにしていたからである。
他人をあまり自分のパーソナルスペースに入れたくない、近付けたくないという思いもあるのは今だからわかっている。
複数人の秘書を付けて、疑似ハーレム状態になっている進さんを見習ってほしい気持ちはないでもなかった。実際そんな状態になれば、嫉妬してしまうのだろうけれど。