夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~

(前に比べれば、ね)

 そのとき、春臣さんの手がシャツを軽くまくり上げた。
 驚いて手を押さえようとすると、絶妙な一瞬を狙って耳にキスをしてくる。

「な、に……」
「お前を仕事から引き離す方法なんて、いくらでもあるんだからな」
「だからって、こんな……」

 お腹をくすぐる手にひどく意識を持っていかれてしまう。
 ゆるりとなぞった指は妙に熱い気がして、触れられた場所からじんわりと火が灯った。
 焦らすように、期待させるように滑った指が徐々に上がってくる。
 軽く、下着を引っ張られた。

「っ――!」

 首を思い切り横に振って、春臣さんの腕から逃げ出す。
 触れることに夢中だったからか、拘束は緩かった。

「えっちです!」
「……人にそう言われたのは初めてだな」
「仕事は明日にしますから、もう変なことをしないでくださいね」
「そこはもう少し俺を楽しませるところだと思うんだが」
「楽しませるって、なに――」
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