夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「……先にシャワーがいいです」
「仕方ないな」
結局、横抱きに抱き上げられてしまった。
春臣さんはまっすぐ脱衣所へ向かうと、優しく私を下ろしてくれる。
ほっとしたのも束の間、勢いよくシャツを脱ぎ捨てられた。
「もしかして、一緒に入るつもりですか?」
「その方が効率がいいだろう?」
「……恥ずかしいんですからね」
「いい加減慣れてくれ」
(……無理)
夫だけど、まだ過ごした時間は多くない。
夜をともにした時間も一度ではないのに、まだ肌を見るとどぎまぎしてしまう。
いつまでも慣れないのは、私がこの人に恋をしているせいだ。
広い胸にすがったことも、その腕に優しく抱き締められたこともあるのを、なにもないときでも鮮明に思い出してしまえるせい。
脱ごうとしない私を見て、春臣さんが服に手をかけてくる。
面倒見がいいというよりは、早くしてほしいという焦りに似たものを感じた。
「春臣さん」
「うん?」
「背中、流してあげますね」
「……ああ」
おとなしくされるがままになり、一枚ずつ服を脱がされ、肌を暴かれていく。
明日の仕事はどうしようかと考える自分もたしかに頭の中にいた。
けれど、それもやがて与えられる甘さの中に溶けていってしまう――。