夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
招待客を見れば、誰も彼もがパートナーを連れている。
社長と思しき男性の隣に立つのは雑誌の表紙を飾ったことのあるモデルだったり、先日女優としてデビューを果たし有名になったアイドルだったり、私が知らない顔でもこの場にふさわしい落ち着きと気品を漂わせた人だったりと、実に目に楽しい。
でも、だからこそ自分の居場所がわからなくなる。
春臣さんは妻の立場で言うのは気恥ずかしいけれど、結構有名人である。立ち上げたばかりの会社を一代で有名企業に成長させ、未だその勢いは留まることを知らない。その上、祖父は日本でも知らない人がいないほどの大財閥を築き上げた倉内時治さんだ。
ちらちらと女性たちの視線が値踏みするように――私に向けられるのも仕方がない。
(なんであの倉内春臣がこんな冴えない女と? って思ってるんだろうなぁ)
好奇の目で見られるくらいならいい。でも、中にはあからさまな侮蔑や、嘲笑を向けられることもある。
実際、先ほどもやんわりと“なぜ”を聞いてきた女性社長がいた。