夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
人付き合いが得意ではない春臣さんは、見た目以上に精神的に疲れている。
それを悟って適当な理由を付けてみたけれど、一応は納得してくれたようだった。
(このあともまだ話さなきゃいけないときがあるかもしれないし、休めるときに休んでほしい)
妻として、秘書として、そんなふうに考える。
春臣さんをその場に残し、会場の隅にあるバーカウンターへ向かった。
ほかにも飲み物を取りに来た人が何人もいる。
それぞれ思い思いに飲みたいものを告げ、受け取ってまた立ち去って行った。
私も同じように注文を行う。
「ミモザとモスコミュールをお願いします」
「かしこまりました」
さっき頼んだものと同じものを告げ、しばらく待つ。
出張のバーテンダーに本格的なカクテル。ここにかかっている金額もそれなりなのだろうと考えてしまった自分が悲しい。
「お待たせいたしました」
「ありがとうございます」
受け取って春臣さんのもとへ戻ろうとすると、少し歩いたところで前を塞がれる。