夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
短編:夫婦はじめ
抜けるような青空が目に眩しい。
今日という日を祝福するかのようで、胸が詰まった。
磨かれた窓から空を見上げているのは私だけで、春臣さんは陽を避けるようにして待機していた。
その姿を振り返り、やっぱり胸がいっぱいになる。
「春臣さん」
呼んだのは、契約者から本当の結婚相手に変わった夫の名前。
「ん」
どうした、とも、なんだ、とも言わない、短いだけの返事がくすぐったい。
春臣さんはいつもそうだった。言葉が少なくて、ときどき必要なことでさえ省こうとする。だから誤解されやすいのだと幼馴染の進さんは言っていた。
それも随分と改善されたものだった。お互いに言うべきことは言って、わからないことは聞くようにしていたから。
「奈子?」
感慨深い思いに浸っていると、私がぼうっとしているように見えたのか、春臣さんが近付いてくる。
初めて出会ったときよりずっと優しくほころぶようになった顔が、今は穏やかな笑みを浮かべていた。
一歩、近付く。
それに合わせてひらりと裾がなびいた。
――私の、ウェディングドレスが。