夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「あ、ここ……素敵です」
「たしかに好きそうだな」
「わかるんですか?」
「なんとなくなら。……どれが好きなのか当ててみろ、なんて言うのはやめておけ」
「今、やってみようと思ったのに……」
ふたりで一緒に雑誌を見る。
どの式場も選べないほど素敵な場所ばかりだった。
今日、春臣さんは各地の相談所を回って話を聞いてきてくれたに違いない。私も連れて行ってくれればいいのにと思ったけれど、これはこれでよかった。
まるで、サプライズのようだったから。
「今日は選びきれそうにないですし、ひとまずご飯を食べましょうか」
「献立は?」
「白菜のクリーム煮とひじきの佃煮、それから豚肉の豆苗巻きです」
「最後のは初めてだな」
「きっと気に入ると思いますよ」
雑誌でいっぱいになっていたテーブルを片付け、そそくさとキッチンへ向かう。
春臣さんもその後をついてきた。
かつてはなにを準備するのか伝えていたけれど、今はもうひとりで必要なものを出してくれる。母親気分でじんとしたのは内緒だった。
(変わったなって思うところも、変わってないなって思うところもたくさんある。きっと、春臣さんも私に対して同じように思ってるんだろうけど)
白菜のクリーム煮をよそいながら、しみじみ考える。
少し気持ちが高揚しているのは、きっと結婚式の話を出されたせいだろう。