夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「なーちゃん、大変なの!」
食い気味に母が大声を出す。
鼓膜がビリビリした。
「もうちょっと声抑えて……。どうしたの?」
「それがね、お父さんから借金があるって聞いて!」
「えっ」
「ほら、最近うちも厳しかったでしょ? だから返済も滞っちゃってたみたい」
私の実家はいわゆる地域密着型の小料理屋だった。
昼間はお弁当を、夜は和食を提供する小ぢんまりした店である。
(新規のお客さんが全然入ってこないっていうのは聞いてたけど……)
「借金って、どのくらい?」
「……一億」
「…………え」
「一億あるんだって……借金……」
この場で叫び出さなかったのが不思議だった。
(一億? 一億って……一億!?)
その数字なら会社の書類で見たことがある。
これが私の通帳に振り込まれてくれればと何度思ったか分からない。
けれどまさか、よりによって借金という形で関わることになろうとは。
「それ……大丈夫なの……?」
「大丈夫だったら電話してないわよ……」
「うん……そうだよね……」
母もまだ事実を受け止めきれていないのが声のトーンでよく分かった。
私だっていきなり一億の借金があると言われれば、こうもなる。
「……どうするの?」
「ひとまず、かき集めるだけお金を集めてるの。お父さんもあちこちに頭を下げて回って……。だけどそれでも半分までにしかならなくて」
「……半分なんとかできただけ、まだマシだよ」
「なーちゃん……」
「私もちょっと考えてみる。返済まで期限はあるんだよね?」
「それも交渉してるみたい。あんまり延ばせないだろうけど……」
食い気味に母が大声を出す。
鼓膜がビリビリした。
「もうちょっと声抑えて……。どうしたの?」
「それがね、お父さんから借金があるって聞いて!」
「えっ」
「ほら、最近うちも厳しかったでしょ? だから返済も滞っちゃってたみたい」
私の実家はいわゆる地域密着型の小料理屋だった。
昼間はお弁当を、夜は和食を提供する小ぢんまりした店である。
(新規のお客さんが全然入ってこないっていうのは聞いてたけど……)
「借金って、どのくらい?」
「……一億」
「…………え」
「一億あるんだって……借金……」
この場で叫び出さなかったのが不思議だった。
(一億? 一億って……一億!?)
その数字なら会社の書類で見たことがある。
これが私の通帳に振り込まれてくれればと何度思ったか分からない。
けれどまさか、よりによって借金という形で関わることになろうとは。
「それ……大丈夫なの……?」
「大丈夫だったら電話してないわよ……」
「うん……そうだよね……」
母もまだ事実を受け止めきれていないのが声のトーンでよく分かった。
私だっていきなり一億の借金があると言われれば、こうもなる。
「……どうするの?」
「ひとまず、かき集めるだけお金を集めてるの。お父さんもあちこちに頭を下げて回って……。だけどそれでも半分までにしかならなくて」
「……半分なんとかできただけ、まだマシだよ」
「なーちゃん……」
「私もちょっと考えてみる。返済まで期限はあるんだよね?」
「それも交渉してるみたい。あんまり延ばせないだろうけど……」