夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
・そんなプロポーズってありますか?
話がまとまるのは早かった。
部長がすぐに例の体育会系の友人へ連絡を取ってくれたからだ。
部長も実家が弁当屋だそうで、他人事とは思えないと言ってくれたのも大きい。
そして私は今、あのクロスタイルの本社にいる。
(す、すごい……)
一等地にある三十階建てのビルは、受付まで私の思い描いていたものと違いすぎた。
公園に迷い込んだのかと思うような緑の数々。
大きな窓から差し込む光は柔らかで優しい。
それでいて最先端の技術がちらほら目に付いた。
携帯端末を持ち歩いた受付係は複数人おり、今、私の目の前にもいた。
「十五時から面接の袖川様ですね。少々お待ちください」
「はい」
案内された待合室はちょっとしたカフェのようでもあった。
柔らかい椅子が逆に落ち着かず、いけないと思いながらあちこち見回してしまう。
(私が来てからずっと来客が途切れてない。いつもこんな感じなの……?)
同じように待合室へ通されたスーツ姿の人々を見て、そんな風に考える。
そうして待っていると、エレベーターで最上階まで行くよう言われた。
(最上階って……まさかいきなり社長面接だったりする?)
動揺を隠しつつエレベーターに乗り、三十のボタンに触れる。
一緒に乗り込んだ社員たちの視線を感じたけれど、今はそれどころではなかった。
(さすがに社長と話すなんてことは……。でも、どうなんだろう。社長の秘書を決める面接なんだし……)
いくら部長という伝手があっても、そこまで優遇されるとは考えづらい。
とはいえ、考えても答えが出ることではなかった。
頭を切り替え、面接で話すべき内容を脳内で復唱する。
二十五階を超えると、エレベーターの中は私一人になった。
本当に最上階まで行くのだという緊張感に手汗を滲ませながら、気持ちを落ち着かせる。
永遠に続くかと思われた時間も終わり、エレベーターの扉が開いた。
部長がすぐに例の体育会系の友人へ連絡を取ってくれたからだ。
部長も実家が弁当屋だそうで、他人事とは思えないと言ってくれたのも大きい。
そして私は今、あのクロスタイルの本社にいる。
(す、すごい……)
一等地にある三十階建てのビルは、受付まで私の思い描いていたものと違いすぎた。
公園に迷い込んだのかと思うような緑の数々。
大きな窓から差し込む光は柔らかで優しい。
それでいて最先端の技術がちらほら目に付いた。
携帯端末を持ち歩いた受付係は複数人おり、今、私の目の前にもいた。
「十五時から面接の袖川様ですね。少々お待ちください」
「はい」
案内された待合室はちょっとしたカフェのようでもあった。
柔らかい椅子が逆に落ち着かず、いけないと思いながらあちこち見回してしまう。
(私が来てからずっと来客が途切れてない。いつもこんな感じなの……?)
同じように待合室へ通されたスーツ姿の人々を見て、そんな風に考える。
そうして待っていると、エレベーターで最上階まで行くよう言われた。
(最上階って……まさかいきなり社長面接だったりする?)
動揺を隠しつつエレベーターに乗り、三十のボタンに触れる。
一緒に乗り込んだ社員たちの視線を感じたけれど、今はそれどころではなかった。
(さすがに社長と話すなんてことは……。でも、どうなんだろう。社長の秘書を決める面接なんだし……)
いくら部長という伝手があっても、そこまで優遇されるとは考えづらい。
とはいえ、考えても答えが出ることではなかった。
頭を切り替え、面接で話すべき内容を脳内で復唱する。
二十五階を超えると、エレベーターの中は私一人になった。
本当に最上階まで行くのだという緊張感に手汗を滲ませながら、気持ちを落ち着かせる。
永遠に続くかと思われた時間も終わり、エレベーターの扉が開いた。