夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「どうせすぐ離婚する」
「……離婚前提の結婚?」
「そうだな」
短く答えると、倉内さんは私を社長室に入るよう促した。
「引き返す気がないなら入れ」
「……はい」
(この人、命令口調でしか喋れないんだろうか)
むっとしながら後に続いて、指示された通りソファに座る。
来客が来た時に使用するものなのだろう。やっぱりこれもふかふかしていた。
倉内さんが私の目の前に腰を下ろす。
そのちょっとした仕草から苛立ちがにじみ出ていた。
「結婚期間は一年でいい。その時になって届を書くのも面倒だろう。先に用意しておいた」
机に並べられたのは婚姻届と離婚届だった。
いい値段のしそうなペンも一緒に差し出される。
(婚姻届を離婚届と一緒に出す人、初めて見た)
「結婚を呑む代わりに、俺もお前の要求を聞く。必要なものがあれば言え」
「…………それはお金でも、ですか」
ためらいながらそう尋ねると、あっさり頷かれる。
「一番手っ取り早いな。いくら欲しい?」
「ご……五千万必要なんです……」
さすがに遠慮がなさすぎるかと思ったのに、倉内さんは平然としていた。
「それだけでいいのか。安いな」
「安いって……大金ですよ」
「お前にとっては会ったばかりの男と結婚できる程度の金額だろう」
うっと言葉に詰まる。
確かにその通りだったけれど、面と向かって言われると胸が痛い。
変に誤解されるのも嫌で、聞かれる前に自分から理由を話す。
「実家に借金があるんです。すぐに用意しなければならなくて」
「そのためなら結婚も辞さないと」
「……それで本当にどうにかできるのなら」
「……離婚前提の結婚?」
「そうだな」
短く答えると、倉内さんは私を社長室に入るよう促した。
「引き返す気がないなら入れ」
「……はい」
(この人、命令口調でしか喋れないんだろうか)
むっとしながら後に続いて、指示された通りソファに座る。
来客が来た時に使用するものなのだろう。やっぱりこれもふかふかしていた。
倉内さんが私の目の前に腰を下ろす。
そのちょっとした仕草から苛立ちがにじみ出ていた。
「結婚期間は一年でいい。その時になって届を書くのも面倒だろう。先に用意しておいた」
机に並べられたのは婚姻届と離婚届だった。
いい値段のしそうなペンも一緒に差し出される。
(婚姻届を離婚届と一緒に出す人、初めて見た)
「結婚を呑む代わりに、俺もお前の要求を聞く。必要なものがあれば言え」
「…………それはお金でも、ですか」
ためらいながらそう尋ねると、あっさり頷かれる。
「一番手っ取り早いな。いくら欲しい?」
「ご……五千万必要なんです……」
さすがに遠慮がなさすぎるかと思ったのに、倉内さんは平然としていた。
「それだけでいいのか。安いな」
「安いって……大金ですよ」
「お前にとっては会ったばかりの男と結婚できる程度の金額だろう」
うっと言葉に詰まる。
確かにその通りだったけれど、面と向かって言われると胸が痛い。
変に誤解されるのも嫌で、聞かれる前に自分から理由を話す。
「実家に借金があるんです。すぐに用意しなければならなくて」
「そのためなら結婚も辞さないと」
「……それで本当にどうにかできるのなら」