夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
 目まぐるしく時間が過ぎたように感じたのは、やることが多かったせいに違いない。
 実際は三日と経っていなかった。結婚するということを考えれば異常だろう。
 事務的に婚姻届を提出し、両親に事情は説明せず結果だけを伝えた。

 これまで色恋の話ひとつ出さなかった私が、実家への挨拶も済ませていない男と突然結婚することになった――という話を父はともかく、母がどこまで信じたかは分からない。
 あの借金の話があった後で、倉内さんは金銭面に余裕がありすぎるほどある人物である。そして母は、言わずともなんとなく察してしまえる程度に勘がいい。

 何も言わなかったのは真実を知ることが怖かったからなのか、それともこの結果を受け入れている私を思ってのことなのか、私も母には聞かなかった。
 ただ、少し心配した素振りは見せていた。
 こうして、ひとまず両親は納得させることに成功する。

 会社には部長含む一部の上司にだけ伝え、詳細は省いて秘書兼妻になることを告げていた。
 驚かれたけれど、事前に倉内さんの方から話があったらしい。
 大事にしたくないからとのことだったけれど、「もし余計なことを言えばどうなるか」というだけの簡単な話だろうと思っている。さすがに親会社の社長を敵には回せないだろう。
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