夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
こんな風に私の身辺が整理されると、今度は倉内さんに付き合う番だった。
日曜日――いつもなら家でのんびり過ごす私が、購入したばかりの服を身にまとっている。
しかも、だ。
信じられないほどの豪邸の一室で正座までしている。
古きよき和室で、品のいい机を挟み向かい合っているのは倉内さんの祖父である時治さんだった。
さっきからずっと口も開かず、私を穴が開くほど見つめている。
(名前だけは知ってた。日本を裏で支配してるって言われるくらいの大財閥を築いた億万長者だって)
何せ、社会の教科書にまで載るような人である。
御年七十三と聞いていたけれど、とてもそうは見えない。
生気に満ち溢れているとでも言えばいいのか、まだまだ現役だと全身から伝わってくる。
その、何を言えば分からなくなるような威圧感は私の隣にいる孫とよく似ているのかもしれなかった。
「春臣」
「ん」
ようやく口を開いたかと思えば、倉内さん――倉内さんと時治さんで分けようと思う――がすぐに短い答えを返す。
「なんで今まで、祖父ちゃんに紹介してくれなかった?」
「面倒なことになりそうだからだな」
「そうやって祖父ちゃんと美人さんが仲良くなるのが嫌だったんだろ」
「は?」
「けどなあ、祖母ちゃんもそりゃあ綺麗だったんだぞ」
うんうんと頷きながら言う姿は、日本を牛耳る大財閥の会長らしくない。
というか、話している内容も話し方もいまいちイメージと噛み合わない。
(ものすごく厳しい人なんじゃないかと思ってたけど、意外とラフな感じ……?)
「袖川奈子さんだったね、この子で本当にいいのかい」
突然、話を振られる。
日曜日――いつもなら家でのんびり過ごす私が、購入したばかりの服を身にまとっている。
しかも、だ。
信じられないほどの豪邸の一室で正座までしている。
古きよき和室で、品のいい机を挟み向かい合っているのは倉内さんの祖父である時治さんだった。
さっきからずっと口も開かず、私を穴が開くほど見つめている。
(名前だけは知ってた。日本を裏で支配してるって言われるくらいの大財閥を築いた億万長者だって)
何せ、社会の教科書にまで載るような人である。
御年七十三と聞いていたけれど、とてもそうは見えない。
生気に満ち溢れているとでも言えばいいのか、まだまだ現役だと全身から伝わってくる。
その、何を言えば分からなくなるような威圧感は私の隣にいる孫とよく似ているのかもしれなかった。
「春臣」
「ん」
ようやく口を開いたかと思えば、倉内さん――倉内さんと時治さんで分けようと思う――がすぐに短い答えを返す。
「なんで今まで、祖父ちゃんに紹介してくれなかった?」
「面倒なことになりそうだからだな」
「そうやって祖父ちゃんと美人さんが仲良くなるのが嫌だったんだろ」
「は?」
「けどなあ、祖母ちゃんもそりゃあ綺麗だったんだぞ」
うんうんと頷きながら言う姿は、日本を牛耳る大財閥の会長らしくない。
というか、話している内容も話し方もいまいちイメージと噛み合わない。
(ものすごく厳しい人なんじゃないかと思ってたけど、意外とラフな感じ……?)
「袖川奈子さんだったね、この子で本当にいいのかい」
突然、話を振られる。