夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
多少強引な手段でも取らない限り、曾孫の顔が見られないと思ったのかもしれない。
「でも、不思議ですね。倉内さんなら援助を受けずに事業を進めそうですが」
「実際、そうだった」
「なのに……?」
「俺が断ったと思っていた援助を、海理がその話ありきで進めていた」
まだちゃんと結婚の話を伝えていない副社長の名前が出てくる。
下の名前で呼ぶあたり、相当親しい間柄なのは間違いない。
「断るには時間がなかった。だから結婚する羽目になったわけだな」
「……なんというか、倉内さんも大変ですね」
「巻き込まれたのはお前も同じだろう」
「でも、無理矢理結婚させられるようなことにはなりませんでしたよ」
「借金のために結婚したのに、か」
「私は他の選択肢を捨てただけです。これが一番、いろんな意味で両親を安心させられると思ったのもあって」
「安心?」
「結婚の予定がなかった私を、両親も言わないだけで気にしていたようですから」
「親のためによくやるものだな」
「私も自分でそう思います。だけど、それで幸せになってくれるならいいです」
実際、特に悲観はしていなかった。
特に自分の希望がない以上、その分を誰かのために使えるならそれでいい。
「私は私で妻として頑張ります。だから、倉内さんもよろしくお願いしますね」
「ああ。俺も練習が必要なのはよく分かったからな」
(あ、自覚あったんだ)
そう思った時、突然腰を抱き寄せられた。
「なっ――」
「祖父さんが見てる」
声を潜められてぎくりとする。
確認するために振り返れば怪しまれるだろう。
「夫婦の真似……ってことですか?」
「話が早くて助かる」
「でも、不思議ですね。倉内さんなら援助を受けずに事業を進めそうですが」
「実際、そうだった」
「なのに……?」
「俺が断ったと思っていた援助を、海理がその話ありきで進めていた」
まだちゃんと結婚の話を伝えていない副社長の名前が出てくる。
下の名前で呼ぶあたり、相当親しい間柄なのは間違いない。
「断るには時間がなかった。だから結婚する羽目になったわけだな」
「……なんというか、倉内さんも大変ですね」
「巻き込まれたのはお前も同じだろう」
「でも、無理矢理結婚させられるようなことにはなりませんでしたよ」
「借金のために結婚したのに、か」
「私は他の選択肢を捨てただけです。これが一番、いろんな意味で両親を安心させられると思ったのもあって」
「安心?」
「結婚の予定がなかった私を、両親も言わないだけで気にしていたようですから」
「親のためによくやるものだな」
「私も自分でそう思います。だけど、それで幸せになってくれるならいいです」
実際、特に悲観はしていなかった。
特に自分の希望がない以上、その分を誰かのために使えるならそれでいい。
「私は私で妻として頑張ります。だから、倉内さんもよろしくお願いしますね」
「ああ。俺も練習が必要なのはよく分かったからな」
(あ、自覚あったんだ)
そう思った時、突然腰を抱き寄せられた。
「なっ――」
「祖父さんが見てる」
声を潜められてぎくりとする。
確認するために振り返れば怪しまれるだろう。
「夫婦の真似……ってことですか?」
「話が早くて助かる」