夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
私は自分のできることをしているだけで、別に夫婦らしくしようと思ってやっているわけではない。
けれど、おそらく一人だった時と何も変わらない春臣さんに比べれば、まだ行動している方なのだろう。
「別にここまでしなくてもいい」
「好きでしていることですから。それに、家であなたと何かしら接するようにしないと、外でうまく演じられないかもしれません。つまり、練習のようなものです」
「練習、か」
呟くように言うと、春臣さんが私を手招きする。
不思議に思いながら近付くと、手を取られた。
春臣さんはそのままソファへ向かうと腰を下ろし、あろうことか私をその膝に座らせる。
「な、なんですか?」
「練習が必要なんだろう?」
「――!」
座った状態で抱き締められ、声が近い。
鼓動もぬくもりも、嫌というほど感じる。
変な声をあげずに済んだのは何よりだった。
「どうした。夫に抱き締められたら、抱き締め返すのが普通だろう。いちいち固まるな」
「……せめて一言欲しかったです。抱き締めるよ、とか……」
そろりと手を伸ばし、春臣さんの背中に触れる。
私は春臣さんほど密着するように抱き締められなかった。
(……こういうの、何も思わないのかな)
同棲を始めて一週間。
時々、春臣さんはこうして私に触れてくる。
私が夫婦の練習をするように、この人もまた自分なりに考えて行動している――というのは分かるけれど。
私の思うやり方と春臣さんの思うやり方はどうも違うように感じる。
「こういうことも夫婦らしいことだと思います。でも、もっと会話をするとかそういう……」
「会話なら仕事中にもできる」
けれど、おそらく一人だった時と何も変わらない春臣さんに比べれば、まだ行動している方なのだろう。
「別にここまでしなくてもいい」
「好きでしていることですから。それに、家であなたと何かしら接するようにしないと、外でうまく演じられないかもしれません。つまり、練習のようなものです」
「練習、か」
呟くように言うと、春臣さんが私を手招きする。
不思議に思いながら近付くと、手を取られた。
春臣さんはそのままソファへ向かうと腰を下ろし、あろうことか私をその膝に座らせる。
「な、なんですか?」
「練習が必要なんだろう?」
「――!」
座った状態で抱き締められ、声が近い。
鼓動もぬくもりも、嫌というほど感じる。
変な声をあげずに済んだのは何よりだった。
「どうした。夫に抱き締められたら、抱き締め返すのが普通だろう。いちいち固まるな」
「……せめて一言欲しかったです。抱き締めるよ、とか……」
そろりと手を伸ばし、春臣さんの背中に触れる。
私は春臣さんほど密着するように抱き締められなかった。
(……こういうの、何も思わないのかな)
同棲を始めて一週間。
時々、春臣さんはこうして私に触れてくる。
私が夫婦の練習をするように、この人もまた自分なりに考えて行動している――というのは分かるけれど。
私の思うやり方と春臣さんの思うやり方はどうも違うように感じる。
「こういうことも夫婦らしいことだと思います。でも、もっと会話をするとかそういう……」
「会話なら仕事中にもできる」