夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
進さんがテーブルのお菓子をひとつ口にする。
私ももうひとつもらおうかと思った時、ノックもなく扉が開いた。
「何だ、ここにいたのか」
春臣さんが私を見て言う。
「いつまでも戻って来ないからどこへ行ったのかと思っていた」
「あ……すみません」
時計を見れば、結構な時間が経っていた。
「少し話が盛り上がってしまって。何かありましたか?」
「いや、別に」
ちら、と春臣さんの視線が私と、その正面に座る進さんへ移る。
ほんの一瞬眉をひそめたかと思うと、私の手を強く引いた。
「話はもういいだろう。戻ってこい」
「は、はい」
「ごめんなー。新婚さんなのに引き離しちゃって」
引っ張られていた私の背中に進さんの楽しそうな声が投げかけられる。
立ち止まった春臣さんのもとまで来ると、進さんはにっこり笑った。
「春臣のこと、いろいろ聞かせてもらったよ。楽しかった」
「……よかったな」
「奈子さんのことも教えてもらっちゃったけど……アレやコレって春臣は知ってるのか?」
それは私への問いだった。
春臣さんまで私を訝しげに見る。
(そんなに私のことなんか話したっけ……?)
悩んだその時間をどう受け取ったのか、掴んでくる春臣さんの手に力が入った。
「後で俺にも聞かせろ」
「えっ、は、はい」
「あ、嫉妬?」
「くだらないことを言う暇があるなら仕事しろ」
春臣さんに叱られても進さんはニヤニヤしていた。
「また奈子さんを貸してくれよ。話し足りないから」
「…………」
(……春臣さん?)
春臣さんは答えずに私の手をまた引いた。
部屋を出て、再び社長室に戻る。
私ももうひとつもらおうかと思った時、ノックもなく扉が開いた。
「何だ、ここにいたのか」
春臣さんが私を見て言う。
「いつまでも戻って来ないからどこへ行ったのかと思っていた」
「あ……すみません」
時計を見れば、結構な時間が経っていた。
「少し話が盛り上がってしまって。何かありましたか?」
「いや、別に」
ちら、と春臣さんの視線が私と、その正面に座る進さんへ移る。
ほんの一瞬眉をひそめたかと思うと、私の手を強く引いた。
「話はもういいだろう。戻ってこい」
「は、はい」
「ごめんなー。新婚さんなのに引き離しちゃって」
引っ張られていた私の背中に進さんの楽しそうな声が投げかけられる。
立ち止まった春臣さんのもとまで来ると、進さんはにっこり笑った。
「春臣のこと、いろいろ聞かせてもらったよ。楽しかった」
「……よかったな」
「奈子さんのことも教えてもらっちゃったけど……アレやコレって春臣は知ってるのか?」
それは私への問いだった。
春臣さんまで私を訝しげに見る。
(そんなに私のことなんか話したっけ……?)
悩んだその時間をどう受け取ったのか、掴んでくる春臣さんの手に力が入った。
「後で俺にも聞かせろ」
「えっ、は、はい」
「あ、嫉妬?」
「くだらないことを言う暇があるなら仕事しろ」
春臣さんに叱られても進さんはニヤニヤしていた。
「また奈子さんを貸してくれよ。話し足りないから」
「…………」
(……春臣さん?)
春臣さんは答えずに私の手をまた引いた。
部屋を出て、再び社長室に戻る。