夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「普段、誰かと出掛けたりしないんですか?」
「しない」
「進さんとも?」
「あいつはいつも知らない女といるからな。毎週、会う相手が変わる」
「それはまた……」
なんとなく恋多き人らしいとは聞いていたけれど、本当のことらしい。
あの進さんですらこんな風に出掛けないとなると、ますますこの時間を特別に感じてしまう。
(……嬉しい)
そんな気持ちがまた胸に込み上げた時、まだ握られたままの手に気付く。
「春臣さん。手……もう平気ですよ」
「ん? ……ああ」
反応してくれたのに離してくれない。
「引っ張ってもらわなくても自分で歩けます」
「そういうつもりじゃなかった」
珍しく、春臣さんが逡巡した様子を見せる。
何を言い淀んでいるのかと思ったら、手の握り方を変えられた。
指と指を絡めて、手のひらを合わせる。
(これは俗に言う恋人繋ぎ――)
「繋ぎたかったんだ」
え、と顔を上げる。
春臣さんはいつもと変わらず愛想のない顔をしていた。
「嫌ならやめておこう」
「あ、いえ、あの」
ほどけそうになった手を慌てて私も握り返す。
「大丈夫です、このままで」
この人の前で何度大丈夫と言ったのか。
そんなことを考える余裕もなく、なぜか離されまいと必死になる。
「私も繋ぎたかったんです」
「そう思っていたならよかった」
明らかに春臣さんはほっとしたようだった。
得体の知れない感情がもやもやと胸を満たしていく。
(繋ぎたかったって、どういうこと?)
私も同じ言葉を返してしまった。
けれど、どうして自分がそう言ってしまったのか分かっていない。
(……デートだから?)
「しない」
「進さんとも?」
「あいつはいつも知らない女といるからな。毎週、会う相手が変わる」
「それはまた……」
なんとなく恋多き人らしいとは聞いていたけれど、本当のことらしい。
あの進さんですらこんな風に出掛けないとなると、ますますこの時間を特別に感じてしまう。
(……嬉しい)
そんな気持ちがまた胸に込み上げた時、まだ握られたままの手に気付く。
「春臣さん。手……もう平気ですよ」
「ん? ……ああ」
反応してくれたのに離してくれない。
「引っ張ってもらわなくても自分で歩けます」
「そういうつもりじゃなかった」
珍しく、春臣さんが逡巡した様子を見せる。
何を言い淀んでいるのかと思ったら、手の握り方を変えられた。
指と指を絡めて、手のひらを合わせる。
(これは俗に言う恋人繋ぎ――)
「繋ぎたかったんだ」
え、と顔を上げる。
春臣さんはいつもと変わらず愛想のない顔をしていた。
「嫌ならやめておこう」
「あ、いえ、あの」
ほどけそうになった手を慌てて私も握り返す。
「大丈夫です、このままで」
この人の前で何度大丈夫と言ったのか。
そんなことを考える余裕もなく、なぜか離されまいと必死になる。
「私も繋ぎたかったんです」
「そう思っていたならよかった」
明らかに春臣さんはほっとしたようだった。
得体の知れない感情がもやもやと胸を満たしていく。
(繋ぎたかったって、どういうこと?)
私も同じ言葉を返してしまった。
けれど、どうして自分がそう言ってしまったのか分かっていない。
(……デートだから?)