夫婦はじめ~契約結婚ですが、冷徹社長に溺愛されました~
「デザイナーのもとへ他の書類と一緒に送った方が手間にならないと思って……。だからデザインのことを知っているのは他にもいます……」
もし、あの時心ない誰かがデザインを見てしまっていたら。
他の書類とまとめて任せたりせず、私が最後まで責任を持って確認していれば。
どこで誰が何をしたかは分からないけれど、私の行為が現状を引き起こしてしまったのは間違いない。
背筋が冷えていく。
「私が原因です、よね」
「違う」
すぐに否定してくれる春臣さんが――好きだった。
「お前は自分の仕事をしただけだろう。自分から横流ししたわけじゃない」
「――でも、その証拠ってないよな」
進さんがひどく静かな声で言う。
いつも快活なこの人がそんな声で話す所は、今まで一度も見たことがなかった。
「今の話を信じるなら、奈子さんは悪くない。悪いのは総務課にいる誰かだ。……けどさ、それが本当だってどうやって信じたらいい?」
「海理!」
春臣さんが声を荒げる。
「奈子はやらない。やる必要がない」
「自分が騙されてないって言えるのか? ハニートラップって知ってる?」
「ありえない」
幼馴染の二人が睨み合って、先に進さんが目を逸らした。
その間も春臣さんは私の手を離さない。
痛いほど強く握り締められ、そして――。
「――奈子とは契約結婚だ」
え、と春臣さんに目を向ける。
それは進さんに言わないはずの真実だった。
「だからスパイではありえない。俺が一番よく分かってる」
「春臣、お前……」
「一年で別れる予定だった。祖父さんの話が落ち着いた後に」
握ってくれていた手が解ける。
もし、あの時心ない誰かがデザインを見てしまっていたら。
他の書類とまとめて任せたりせず、私が最後まで責任を持って確認していれば。
どこで誰が何をしたかは分からないけれど、私の行為が現状を引き起こしてしまったのは間違いない。
背筋が冷えていく。
「私が原因です、よね」
「違う」
すぐに否定してくれる春臣さんが――好きだった。
「お前は自分の仕事をしただけだろう。自分から横流ししたわけじゃない」
「――でも、その証拠ってないよな」
進さんがひどく静かな声で言う。
いつも快活なこの人がそんな声で話す所は、今まで一度も見たことがなかった。
「今の話を信じるなら、奈子さんは悪くない。悪いのは総務課にいる誰かだ。……けどさ、それが本当だってどうやって信じたらいい?」
「海理!」
春臣さんが声を荒げる。
「奈子はやらない。やる必要がない」
「自分が騙されてないって言えるのか? ハニートラップって知ってる?」
「ありえない」
幼馴染の二人が睨み合って、先に進さんが目を逸らした。
その間も春臣さんは私の手を離さない。
痛いほど強く握り締められ、そして――。
「――奈子とは契約結婚だ」
え、と春臣さんに目を向ける。
それは進さんに言わないはずの真実だった。
「だからスパイではありえない。俺が一番よく分かってる」
「春臣、お前……」
「一年で別れる予定だった。祖父さんの話が落ち着いた後に」
握ってくれていた手が解ける。