記憶の中の貴方
◇無力な私
頭が真っ白になった。
私は、その名前をよく知っている。
光輝は、私の親友で、初恋相手だ。
静かに涙が頬を伝っていることがわかる。
「木瀬?」
背後から、私が立ち止まったことを不審に思った伊藤が声をかけて来た。
だけど、その呼びかけに反応する余裕がない。
「おい、どうしたんだよ」
「木瀬」
伊藤とは別の声が耳に届いた。
現実に戻るには十分すぎる声だった。
「木瀬、今回の被害者と知り合いだね?」
先輩は目の前に立っていた。
私の反応をどこで見ていたのか不明だが、優れた観察力の持ち主の先輩には、気付かれるのも無理ない。
私は抵抗しかなかったが、首を縦に振った。
「……そう。じゃあ」
「捜査させてください!」
遮って、泣き叫んだ。
大人らしからぬ行動だと自覚はしているが、言わなければならないと思った。
先輩は私が叫んだことに驚いていたが、すぐに鋭い視線で私の目を見て来た。
「ダメよ」
突き放すような、冷たい声だった。
しかし、どんなことをされても、言われても、引き下がりたくない。
それが伝わったのか、先輩はため息をついた。
「身内、もしくは知り合いが被害者の場合、捜査には加わらない。忘れたの?」
私は、その名前をよく知っている。
光輝は、私の親友で、初恋相手だ。
静かに涙が頬を伝っていることがわかる。
「木瀬?」
背後から、私が立ち止まったことを不審に思った伊藤が声をかけて来た。
だけど、その呼びかけに反応する余裕がない。
「おい、どうしたんだよ」
「木瀬」
伊藤とは別の声が耳に届いた。
現実に戻るには十分すぎる声だった。
「木瀬、今回の被害者と知り合いだね?」
先輩は目の前に立っていた。
私の反応をどこで見ていたのか不明だが、優れた観察力の持ち主の先輩には、気付かれるのも無理ない。
私は抵抗しかなかったが、首を縦に振った。
「……そう。じゃあ」
「捜査させてください!」
遮って、泣き叫んだ。
大人らしからぬ行動だと自覚はしているが、言わなければならないと思った。
先輩は私が叫んだことに驚いていたが、すぐに鋭い視線で私の目を見て来た。
「ダメよ」
突き放すような、冷たい声だった。
しかし、どんなことをされても、言われても、引き下がりたくない。
それが伝わったのか、先輩はため息をついた。
「身内、もしくは知り合いが被害者の場合、捜査には加わらない。忘れたの?」