夜を迎え撃て
「って、何詮索してんだ俺」
いやいやいや、と左右に顔を振って目を閉じる。
考えるだけ無駄な、どうでもいいことだ。ミオがどこのどいつと何をどうしてようが俺には関係ねーし。知らんし。興味ねーし。
エレベーターの扉が開くなりうんうん、と笑顔で頷いては松葉杖をついて歩き出す。
・・・・・。
「っぁああああああ気になる!!!
なんでこんな気になるんだ俺駄目なんだよこういう中途半端な感じのやつすげえ痒いどうするどうしようああそうだ素数数えよ」
「恭ちゃん!」
「うぐえっ!」
突如鳩尾に入った猛烈な一発に一瞬ちょっと意識飛んだ。
それが俺の当たりどころの悪い位置と丁度同じ背丈であるルナで、更にキラッキラの瞳でぎゅーっと抱きついてきたとあってはすん、となんてことはない男らしさを無理に演じる他ない。
「恭ちゃん今日もかーっこいー!」
「知ってる」
「ひていしろや」
言うほどお前カッコよくねーからな、ってサラッとルナの後ろから登場するセナの言葉がぐさりと胸に突き刺さった。くそ、このイガグリ頭め。少なからずお前の十年後よりは俺の方がまだイケメンだわ、と思うもののそれを口に出したらまた喧嘩勃発しそうだし、ひとまず心の中うんうんとひとりで納得しておく。あー俺って大人。
そうこうしてる間にもルナの方は俺のお腹あたりでほっぺたをうりうりしていて、お前はセナと違って(いやセナも素直になれば)可愛いな、と頭を撫でてやったらぴょん、と跳ねた。
なんかな。愛情表現がひたすら毒っ気0の犬猫だなお前は。
「恭ちゃん恭ちゃん!」
「はい恭ちゃんですよー」
「あそぼ!」
「悪いな、俺は今から行くところがある」
「行くとこってミオんとこだろ」
「うんそうそ……えっ」
意表を突かれて目を丸くしているとフン、と鼻で笑われた。
「バレバレなんだよ。ここぞとばかりにかんしょうにひたってやがったな、背中がものがたってたぞ」
「おっまえまた難しい言い回しを…」
「ルナも恭ちゃんさけんでるのきいたー!」
「えぇ…どのへんあたりから」
「「なんでこんな気になるんだあたりから」」
「一部始終じゃねーか」