夜を迎え撃て
「いや思ってたんと違う」
「なにが」
「こっちの話」
それでなんでミオが俺のベッドで寝てんだよ。
「一人じゃ眠れない♡(※過度な脚色)」みたいなこと言うからちょっと甘やかしてじゃあって提案してみたらこれだ。
こっちだって眠いのに、と眠気MAXで苛立ちすら覚え始めた俺はベッド横の丸椅子に腰掛けて、ミオはといえば布団でぬくぬくとしている状態。あー羨ましいですねほんと。俺お前より体ぼろぼろなんですどその辺わかってもらえてますかね。無理した左足現在進行形で痛いです。
あわや貧乏ゆすりし兼ねない俺を前に、毛布を口元まで被ったミオがもそ、と窓の外を見た。
「…不思議。病院の中からでも星が見えるけど、さっき外で見たのとは見え方がまるで違うよね」
「面積の問題だろ」
「知ってる? 恭平。寿命の短い星は赤色なんだよ。星は燃え尽きて死ぬからね、ここからじゃ到底見えないけど、そのか細い光は一番星とも違う輝きなんだって」
「その理屈でいくと生まれたての星は青いのかもな。
てかそれならマリオで無敵になる星ってなんで黄色なわけ、マリオに限らず人の星に対する固定観念間違ってるよな」
「えー…そうだね、言われてみれば…でもマリオに関しては、黄色の方がこう…ぱっ! て感じするからじゃない? 無敵わーい! みたいな」
「今のもっかいやって」
「絶対やんない」
なんでだよ可愛かったのに。
揶揄うように言ったのが気に食わなかったのか、布団を頭まで被ったミオがむくれたように動かなくなった。おい寝んなよ、と更に“追いちょっかい”をかけようとして、ふと気付いてしまった。
布団を持ったミオの手が、小刻みに震えていることに。
夜はそれでもまだ、怖いのかもしれない。
ミオは眠りにつくこと自体を一番に怖がっていた。常人で言うなら、今まさに死に瀕している状態とまるで変わりないのかもしれない。でも近付き過ぎて怯えさせてしまうのも違う。
だから、悪戯めかして布団の端に指を軽く引っ掛けた。
「添い寝してやろうか?」
「は!? ふざっ…ばっかじゃない!? お前のことだからどーせまたヤラシイ事考えて」
「だーから冗談だろって。俺のこと意識しすぎかよ」
「っ!」
うそうそ俺はその辺の違うベッドで寝ますよ、と布団も毛布も用意されてない白い台のどれにしようか物色していたら、小さく声が聞こえた気がした。空耳かと思い振り向くと、毛布から少し顔を出したミオの目が覗いている。