幸せの扉を探して

ドイツ①**


ドイツで暮らして半年が過ぎた。

瞳子は、ピアノの先生の紹介で
ドイツの大学でピアノのレッスンに
励みながら
ボランティアでピアノリサイタルを
催したり、
語学力を生かして翻訳の仕事も
している。

2LDKの部屋は
一部屋には、ピアノが置いてあり
一部屋は、寝室
リビング・ダイニングは、
仕事部屋を兼ねて
毎日、穏やかに暮らしている。

ドイツについたばかりの時は

寂しさと情けなさに
泣いてばかりいたが
母親からピアノが
届いてからは、
少しずつ落ち着いていった。

忙しい両親と
笑いあって、触れ合ってという
思い出はなく
愛されていないと
思っていたが・・・
母の思いが嬉しくて感謝して
毎日を過ごした。

ドイツでの生活にも慣れてきて
食事も自分で作り、食べている。

日本でなら、考えられなかった。
だが、今は自分でお金も管理しないと
行けないから。
節約しながら、生活をしている。

ピアノのレッスン料(高いから)は、
マンションが売れたからと
父から渡されたお金を使わせてもらって
日々の生活は、翻訳の仕事で得た
お金を使っていた。

いまの瞳子は、日本にいた頃の
瞳子とは違った。

ドイツで相澤財閥なんて
言っても、誰も振り向きもしないし
だから?
って事になる。

そんなことを口にしたことはないが。

今は、このドイツでの生活が
とても楽しくて充実している。

桜にしたことを悔やんで謝りたいと
思うが・・・
それは・・叶えられない。

あんなに好きだった、
架瑠に対しても
何も感じない・・・

麗音を思うと胸が苦しくなる
だが、麗音は商売人だ
相澤財閥の娘だから
丁重におもてなしをしただけだと
わかっていた。

ドイツにきて
声をかけてくれる人はいるが
麗音と比べてしまい
どうしても恋人にはなれずにいた。

瞳子は、それなら、それで
一生、一人で良いと思っていた。
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