渡せなかった手紙の行方
島津君は右に、吉澤君は左に。

その真ん中に私はいた。島津君と吉澤君はお互い目を合わせて何かを言っているように見えた。

私は戸惑いながらも、声を発した。

「……あ、あの。私…そろそろ花に水かけに行っていいですか?」

「……あ、あー、そっか。もうこんな時間か。ゴメンね。時間取らせたね」

吉澤君は右手を髪にかきながら、申し訳なさそうに私に言ってきた。

いや、私が申し訳ない。人気者の吉澤君が私に話しかけてくれるだけで嬉しい。

私はお辞儀をして、その場に去った。

去りながら、私は残された二人を見た。すると、冷静になってサッカー部の朝練に向かっていた。

右手にジョウロを持ち、駆け足で自分の教室に向かう中、私は左手に胸をあてた。

久しぶりに人と話したせいか、やたらと心拍数が上がっていた。

教室に着くと、窓際にある花達に話しかけて、花に水やりをした。

「…っ。私でもちゃんと見てくれている人がいたよ。みんなのおかげだよ」

私は一人で花達に話しかけていた。

花達は私にとって、友達で居場所だ。

皆から見たら、キモいとか変なやつだとか思われるだろう。

だけど、私にとってはこの日常がすべてなんだ。

私は彼らがなぜ私の行動を見ていたのかはわからない。

それでも、この感謝の言葉を綴りたい。

ジョウロを近くにおいて、鞄からルーズリーフを取り出す。

吉澤君に手紙を書くことにした。

自分でもなんでか分からないが、感謝をしたいと思ったんだ。

私はルーズリーフをテーブルにおいたら、人がわんさかと教室に入ってきた。

退屈な授業が終わり、昼休みになった。

仲良い友達はいないので、屋上でぼっち飯を食べる。毎日のことなので、一人で食べるのは慣れてしまった。
< 6 / 16 >

この作品をシェア

pagetop