渡せなかった手紙の行方
「だけど、千紘を気にかけてくれる人がいてくれたんだ。それ知れただけ嬉しいな」

舞ちゃんは私と同じなのか、電話越しから何も聞こえてこない。

友達がいるのに、わざわざ、屋上に行って電話してくれているのかもしれない。

それだけで嬉しいのに。

だけど、舞ちゃんには舞ちゃんなりの生活があるっていうのに私は舞ちゃんに甘えてる。

「舞ちゃん。私、頑張ってみる」

「何を頑張るかは知らないけど、頑張ってね。あ、私行くね。時間だから」

「わかった。ありがと」

私は電話を切り、教室へ向かうため、屋上のドアをガチャと開けた。

教室に着いた後、私はルーズリーフを取り出して、吉澤君に手紙を書き始めた。

吉澤君に話しかけもらったこと。

私を知ってくれたのは、吉澤君だけじゃない。島津君もいた。

島津君にも書こうと思ったが、ただ迷惑だと思われるし、私みたいな人に手紙を渡されても島津君が困る顔が目に見えていたから。

なので、私は吉澤君に手紙を書くことにした。

私のことを知ってくれてありがとうという感謝の言葉を綴った。

今の時代は手紙なんか書かなくても、SNSで伝えられる。

だけど、どうしても自分の言葉を字で表したかったんだ。

私は10分程、自分の机に座り、ひたすら思い出して書いた。
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