あの日の空にまた会えるまで。
そう、少しも戻ってなどいない。
あの頃の想いはあのキャンプの日に置いてきた。もう忘れる。そう答えを出したのだから。戻ってなんか、ない。
「真央ちゃんはきっとそれが心配なんだよ。だからいつまでもずっと悠斗とのこと言ってくるんだと思うよ」
真央がいつまでも悠斗との仲を取り持とうとする理由に触れて、申し訳なくなった。真央の優しさが嬉しいのとまだ心配をかけてしまっていること。私はいつまで周りに心配を掛けいるんだろうか。
と、その時。
「あ、ごめん、電話」
蓮先輩の携帯が着信を知らせた。携帯を手に取り画面を見る蓮先輩が一瞬戸惑いの顔を見せたのを私は見逃さなかった。
ーーーもしかして。
「……奏からだ」
やっぱり。
私と一緒にいるときに戸惑いを見せる相手なんて、奏先輩しかいない。
「ごめん、出ていい?」
「どうぞー」
よりによって何故私と一緒にいるときなんだろうか?
前もそうだった。あの時はまだ話もできていなかったから顔を合わせるのが気まずくて、ずっと蓮先輩に顔を隠してもらっていたっけ。
蓮先輩が奏先輩との電話に出るため私は喋らず静かにメロンソーダフロートをスプーンでつつきながら口に頬張る。
「ーーーもしもし?」
電話の向こうの奏先輩の声は、もちろん聞こえない。
「ーーー今?外にいるけど」
「ーーー駅前のカフェ」
「ーーー人と一緒なんだよ。悪いな」
「ーーーあーーー、うん、彼女」
……ん?彼女?
なんだか今、蓮先輩が間違ったことを言ったような気がする。
蓮先輩を見ると蓮先輩は肩を竦めて悪戯っ子のような笑みを見せた。……わざとだな。わざと彼女って嘘言ったな。
「悪い。じゃーな」
蓮先輩が電話を切ったのを確認して、私は言った。
「蓮先輩、今彼女といるんですね」
「あー、ごめんごめん」
悪びれる様子もなく謝ってくる蓮先輩に、私はそれ以上特に何も言わず、メロンソーダフロートを完食した。カラン、とスプーンが音を立てた。