あの日の空にまた会えるまで。
「ていうかさ、なんでこう…タイムリーに連絡よこしてくるかな、あいつは」
「…はは」
前は蓮先輩と一緒にいるときに偶然鉢合わせてしまった。今回も私と一緒にいるときのタイミング。
ほんとタイムリーだな、これ。
「あいつ、近くにいるみたいだよ」
「……そうなんですか」
「どうする?」
「え?」
どうするって…
「また偶然会っちゃうかもしれないよ。会わないように今のうちにそそくさと帰る?」
あぁ、なるほど。そういうことか。
「……帰りましょうか」
少しだけ考えたけれど、こちらから回避できる再会は出来るだけ避けたいと思う。
気付けば蓮先輩のメロンソーダフロートも無くなっており、私たちは席を立った。私の奢りだと伝えてカフェに来たはずなのに結局は蓮先輩が払ってくれた。
「私が払うって言ったのに…」
「いいって。こんなときは甘えときなさい」
……こんなときって、どんなとき?
その上、頑なに私の分ですらお金を受け取ってくれない。
「お金!」
「だからいいってー」
良くない!
何が何でも受け取ってくれないと悟ったわたしは蓮先輩のTシャツの胸ポケットに手を伸ばした。そこにお金を入れてやろうと思ったのだけど、しかしそこはさすが蓮先輩と言ったところか、難なく腕を掴まれてしまった。
「ほんと昔から簡単には奢らせてくれないよね、葵ちゃんは」
「だって!」
「いいって言ってんじゃんー」
お金を渡したい私と受け取りたくない蓮先輩とで次第にヒートアップしていき、とうとう2人で取っ組み合いのようになる。
これ、第三者から見てみればまるで恋人同士のイチャイチャにしか見えないよね…断じてそんなことないけど。
「なんか今日しつこくない?」
「だって奢るって言って来たのに」
「ちょ、待って。鞄に入れるのはダメ」
必死に蓮先輩のボディバッグを掴んだり、ポケットに手を伸ばす。
ーーーと、突然にその手がどこからか出てきた知らない手に掴まれた。