あの日の空にまた会えるまで。
え、な、なに?
一瞬にして警戒する私の体。掴まれた手の先に視線を向けるとーーー
「……奏、先輩」
そこには、何故か驚いた顔を浮かべる奏先輩がいた。
驚き固まった私と、同じく驚いている蓮先輩とを交互に視線を向ける奏先輩。
ーーー近くにいるみたいだよ
そう言うからそそくさと出てきたのに。
「そ、奏…ビックリさせんなよ」
蓮先輩がホッとしたように奏先輩に言うけれど、奏先輩は顔をしかめていまだに驚きの表情を浮かべていた。その視線と表情に蓮先輩が言う。
「……なに」
突然腕を掴んで現れたと思ったら奏先輩は驚いた表情をしている。ビックリしているのはこちらなのに、どうして奏先輩がそんな表情を浮かべているのだろう。
「あ…、」
奏先輩が視線を泳がせたその先に私の腕を掴む手が映る。奏先輩は慌てたようにパッと手を離した。
「ご、ごめん」
「…い、いえ」
「ほんとごめん。何やってんだろ……俺」
最後の一言はまるで独り言のようだった。戸惑った様子の奏先輩は私たちに視線を向けると静かに問うた。
「……付き合ってんの?」
「え…」
唐突な質問に驚きで一瞬固まってしまう。
「ああ、そういうこと。なるほどね」
固まってしまった私とは逆に蓮先輩は納得したように意味深な笑みを浮かべながら一人頷いている。なんだろう、その笑みは。
私と蓮先輩が付き合っているって…?
「付き合ってな、」
「付き合ってるよ」
……え?
「れ、蓮先輩っ」
また変なことを!
しかも奏先輩相手に…!
「……でもお前、彼女いるって…」
「だからその彼女が葵ちゃんで、」
「付き合ってないですから!!」
もうほんとお願いだから余計なこと言わないで!と言う気持ちを込めて蓮先輩を睨みつけた。蓮先輩は肩を竦めて、わざとらしく私から顔を背ける。