あの日の空にまた会えるまで。
「……どういうこと?」
「だから付き合ってないです!断じて!」
「そんな勢いで否定しなくてもいいじゃん」
「付き合ってないんだからもちろん否定するでしょ!」
付き合ってないのに付き合ってるのかと聞かれて否定しない人なんていないでしょ。
「付き合ってないの?」
「付き合ってないです」
「……ほんとに?」
「はい!ほんとに!」
「でもさっき、すごい仲良かったよね?」
さっきって……もしかしてお金を蓮先輩に押し付けていたあの時かな…
見られていたから、勘違いしてしまったということか。あの場面だけ見られたら確かに勘違いしてしまうのも無理はないけれど…
「でも付き合ってないです」
古い付き合いではあるけれど、付き合ってはいない。そう思いつつも頭に過ぎったのは、あのキャンプの日、瑠衣先輩とは付き合っていないと何度も伝えてきた奏先輩の姿だった。
付き合ってるとか付き合っていないとか、そんな話題は普通のことなのだろうか?
ただの先輩と後輩って、そんな話もするのだろうか?
ふとそんな想いが過り、少しだけわからなくなった。自分で決めた道ではあるのに、変に踏み入ることはないと決めたのに、今更になってただの先輩と後輩とはどこまで踏み入れるのかと、疑問が浮かんだ。
「……まぁ、葵ちゃんが誰と付き合おうが奏には関係ないしな」
蓮先輩が言った言葉に心の中で頷く。そうだよね。奏先輩には関係ない。それは逆で言うと奏先輩が誰と付き合おうが、瑠衣先輩と付き合っていようが私には関係のないことなんだ。
奏先輩にとって、私はそういう存在だ。そして私にとっての奏先輩も、そうでなくちゃいけない。
だから、ただの先輩と後輩に戻ると決めたんだ。
「で、お前何やってんの?」
「…いや、別に何も」
「この店入んの?」
私たちがさっきまで入っていた店を指差して、蓮先輩は奏先輩に尋ねた。