あの日の空にまた会えるまで。
本当はお礼だけでも伝えようかと思ったこともある。
お礼くらいならいいだろうと。それだけお世話になったのだから、伝えるべきだろうと。
結局行動に移せないまま、奏先輩と再会した夏が終わってしまったのだった。
こうして終わっていくのだろう。交換大学も終わって、そのまましこりの残る過去として、私たちは他人になる。想いを置いてきぼりにして、時間だけが過ぎていく。
忘れるとはそういうことなのだろうかと、そう思う。
そして最近は……ーーー
「……葵、また来てるよ」
真央の言葉と視線に、私は英語の参考書から視線をそこに向ける。
講義室の扉に背中を預けているその人は、私と目が合うと小さく手を上げてニコリと笑う。
私は苦笑いを浮かべて軽く頭を下げた。
「ほんとアピール全開って感じね」
真央の言葉にまた苦笑する。
「……行ってくるね」
「行ってらー」
少しだけ重たい足取りで向かった先にいるのは。
「どうしたんですかーーー祐飛さん」