あの日の空にまた会えるまで。
「はい、ストーップ」
「ま、真央っ」
「すみませんね、祐飛さん。これ以上この子に変なこと言わないでくださいよ。この子、今色々と頑張ってる最中なのでー」
「頑張ってるって?」
「前に進む為に今踏ん張ってる最中だから、邪魔するなってことです」
「…へぇ」
「行くよ、葵。鞄もほら」
いつの間にやらまとめてくれていた鞄を受け取ると、真央は私の腕を掴んで祐飛さんの前を通り過ぎる。
祐飛さんはそれ以上はなにも言ってこず、ひき止めて来ることもなかった。
そして私は、離れていく祐飛さんに振り返ることもなかった。
「葵、完全に弱味につけ込まれてるよ」
「そ、そうかな」
「そうだよ!多分、これからは奏先輩のこといっぱい言ってくると思う。きっと今がチャンスだと思ってる」
「それは…困る」
奏先輩のことは関係なく、私は祐飛さんの気持ちに応えるつもりはない。
今はなにも考えずにいたい。なにかを考えることなく、ただ忘れる方法を探したい。次の恋愛なんて選択肢の一つにも無い。
…と、そこで真央に対して一つの疑問が浮かんだ。いつもの真央なら言いそうなことがまだ真央の口から聞いていないのだ。
「今回は言わないの?」
「なにがよ」
「新しい恋をしろーとか、次に行けーとか、真央なら言いそうじゃん」
何なら真央のことだから、もはや祐飛さんを勧めてくるぐらいはしてきそうなもんだけど。