あの日の空にまた会えるまで。
ある日の昼、ランチルームで真央と談笑をしていたとき真央が思い出したかのように問いかけた。
「ねぇ葵、聞いた?交換大学生の話」
「うん、聞いたよ。でも多分私には縁のないやつかな」
「葵の英語学科は広いからね。栄養士コースにも来るらしいから私は思いっきり関係あるんだよねぇ。でも興味ないや」
ゼミ担から聞かされた時の話を思い出す。
大学同士の連携として、お互いの大学生を交換して交流を深めようという話があった。
交換期間は半年。学科やコースはもちろん配慮されるけれど、真央の栄養士コースは私のいる英語科より遥かに人数が少ない。まるで一つのクラスのようにある。そんな栄養士コースに交換大学生が来るとなると真央が言う通り、関係ないわけじゃないだろう。
その点、私のいる英語科は人数が多く、入学して半年が経った今でも名前も顔も知らない人は数えきれない。そんな大所帯の学科で交換大学生が来たところできっと私と関わることはないだろう。チラッと顔を見たところでもしかしたらその人が交換大学生なのかすら気付かないかもしれない。
もちろんどうなるかは分からないけれど。
ーーーなんてことを、話していた矢先。
「よろしくお願いします!」
「よ、よろしくね」
まさかの私がいるゼミで受け入れることになった。
関わることはないかもなんて思っていた私が馬鹿だった。別に嫌なわけじゃないけど、正反対の結果に自分でビックリする。
「春ちゃん、今からお昼食べに行くけど一緒に行く?私の友だちもいるけど…」
「え、いいの!?」
「うん、いいよ」
交換大学生の春ちゃんはニコニコしていて明るいタイプ。真央が可愛がりそうな、小動物みたいな子。
春ちゃんに講義のことや校舎の話をしながらランチルームに向かう最中も、春ちゃんは目をキラキラさせてキョロキョロと周りを見渡していた。ランチルームについてからも春ちゃんの目のキラキラは止まらない。
春ちゃんは自分で交換大学生を希望したらしい。
向こうの大学でも英語を習う春ちゃんは交換大学生の話を聞き、うちの大学にも英語科があるのを知り手を挙げたそう。なんて好奇心旺盛なんだろう。尊敬する。
「真央!」
「んーーお疲れ、葵」
ランチルームのテーブルで教科書を広げ電卓を叩いていた真央の視線が後ろにいる春ちゃんに向かう。
「交換大学生の春ちゃんだよ」
「あ、葵ちゃんのお友だち?私、伊藤春です!お昼一緒にいいかな?」
「なに葵、縁ないかもとか言っといて思いっきりあんじゃん」