あの日の空にまた会えるまで。
ほんと、なんなの…
だったら、どうして。
「そんなこと言われても、信じられるわけないじゃないですか…っ」
それが本当だとして、だったらどうして私は選ばれなかったの?
どうして裏切られたの…っ?
「裏切ったのは奏先輩なのに…!」
止まっていたはずの涙がまた溢れてくる。なんの涙なのか、自分でも分からなかった。
卒業式の日に会いたいと言ってきた奏先輩。そんな彼は卒業式間近に誰にも何も告げることなく彼女と姿を消した。私との約束を、彼は無かったものとしたのだ。なのに、切り捨てられたはずの私が奏先輩にとって心の支えだった?
意味がわからない。怒りにも似た感情が湧き上がってくるのを感じた。
「そうだよ。あいつは、最低なやり方で裏切って葵ちゃんを傷付けた。虫のいい話だよ。自分勝手にも程があるだろって、俺も同じように思った。そしてそれはあいつも分かってる」
そんなの…勝手すぎるよ。
この6年間、私がどれだけ必死に堪えてきたか。真央や悠斗たちに支えられて必死に忘れようとしてたのに、どこにいるかも知らない奏先輩は…
「葵ちゃん」
「は、い…」
「俺は決してあいつの味方をしてるわけじゃないけど、中学のとき逃げるしかなかったあいつの気持ち、少しだけ理解できるんだ」
「えっ」
「自分勝手で自己中で、葵ちゃんを傷付けた奏だけど、俺はあの時の真実を知って奏に同情したよ」
「真実…」
「そんな何の希望もない境遇の中でこの6年間、葵ちゃんだけを心の支えにするしかなかった奏の気持ちを、俺は否定できない」
ねえ、奏先輩。
あの時、
貴方に何があったのですかーーー?
「だから、葵ちゃん」
蓮先輩の次の言葉を、私は何となく分かっていた。
「奏に、会ってやって」
せめて、謝罪の言葉を聞いてやって欲しい。
話を聞いて、それから答えを出して欲しい。
そう言う蓮先輩に私は何も言えなかった。