あの日の空にまた会えるまで。


「あいつが勝手なのは俺も思う。怒りたい葵ちゃんの気持ちも分かる。けど、自分勝手なのは十分に分かってた上で、奏は逃げるしかなかったんだ。何もかもを捨てて、消えるしか選択肢がなかった」
「……」
「その中でずっと、ずっと、葵ちゃんの存在だけは、奏を支えてたんだよ」

そんなこと…言われても、私に何ができるっていうの?

顔を合わせることすらできない私にどうしろっていうの?

「蓮先輩、さっきとは真逆のこと言うんですね…」

2人で喫茶店でお茶していた時は、こんなこと言ってなかった。ましてや会ってほしいなんて一言も言わなかった。

無視してやれとまで言ってたのに。すぐに答えを求めるんじゃなくて、流れに乗ってみればいいと、そう言ってたのに。

「本当はこんなこと言うつもりなかった。ただ葵ちゃんが心配だったから会いたいと思ったし、葵ちゃんの気持ちのままにやればいいって、最初はそう思ってた」

でも…と蓮先輩は続ける。

「さっきの奏の言葉、葵ちゃんも聞いたでしょ?」


ーーー俺はやっぱりあおちゃんに会いたい

会って謝りたい。


耳を掠めるその声に、私は小さく頷いた。

「葵ちゃんも聞いてしまったからにはこれから先、葵ちゃんはもっとずっと悩んだままなんだよ。ただでさえ上の空なのに、あんなの聞いてしまったら普通に過ごせなくなるでしょ」
「……それ、は」

確かにそう、だけど。

「葵ちゃんがもっと笑えなくなっちゃうのは俺としては嫌なんだよ。それだったら、会って奏の口から真実を聞いて、それから答えを出しても良いんじゃないかって。それに…」
「……」
「俺は、葵ちゃんの味方であり、奏の味方でもあるから。奏の為であっても、葵ちゃんの為にならないようなことはしないし言わないよ」

絶対に、と力強く言う蓮先輩に私は今までのことを振り返る。


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