あの日の空にまた会えるまで。


「……でもほんと、あの人もそうだけど、2年生も3年生もすごく大人に見えるよ」
「確かにな」

其処にはいるのにまるで別世界にいるような、それくらいに遠い存在に思える。見た目や中身は置いといて、上級生というだけですごく大人に感じて、目の前に立たれると一気に背筋が伸びてしまう。

「俺、大学生の兄ちゃんがいるんだけどさ、入学する前に言ってたよ。中学1年にとっての上級生は本当に別次元の存在だって。不思議とすごく大人に感じるんだって」

1年や2年しか違うのにな、と続けた悠斗に私は納得する。

本当に、その通りだと思う。

数日前、迷子になっていた自分を助けてくれた奏先輩も、あれ以来会ってないけれど、すごく大人だった。そういえば元気にしているだろうか。あれ以来会っていないだけに少しだけ奏先輩を思い浮かべる。元々1年生は2年生と3年生の校舎とは離れているため他の学年の人とは移動教室や職員室でしか会うことがあまりない。

あの時のお礼も改まって伝えられていない。いつか会えたらまたお礼を言わなければ。

「俺たちも進級したらそんな存在になんのかな」

想像もできないけれど、きっと私が上級生に感じるこの想いと同じ想いをまだいない次の新入生たちは抱えるのだろう。そう思うと本当に不思議に思える。本人は何も大人になれたなんて思ってなどいないのに。

そんなことを悠斗と話し込んでいて、いつのまにか集会が始まる時間になっていた。各学年各クラス集まった学級委員たちが各々自己紹介を済ませ、委員長副委員長の後期までの仕事内容の説明などを受け、その日の委員会は終了した。

皆がガタガタと教室を出て行く中、私も悠斗と並んで教室を出る…と、その先に数日ぶりに見る彼の人がこちらに進んできているのに気付く。

「あ」

思わず声を漏らした。ブレザーのポケットに手を入れ目を伏せてこちらに進んでくる彼の目に私は映っていない。けれどどんどん近くなる距離に少しだけ胸が高鳴るのを感じた。

話しかけようか、と迷っていた中、となりにいた悠斗が声を掛けてきた。

「佐倉?行かねーの?」

その声に反射的に顔を上げた彼とぱちりと視線が合った。

「あおちゃんだ」

彼ーーー奏先輩がニコリと笑う。

覚えてて、くれたんだ。

「……奏先輩」
「もしかしてあおちゃんも学級委員?」
「あ、はい。…も?」

奏先輩の言い方に首を傾げた。さっきの集会に奏先輩はいなかったはずだけど。

「ああ、俺の幼馴染みがね、」
「そぉー」

後ろから聞こえてきたのは先程までの委員会で終始仕切っていた人、榛名先輩だった。

こないだも話していた奏先輩の幼馴染みって、榛名先輩のことだったのか。



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