あの日の空にまた会えるまで。
確かに、今まで蓮先輩はいつだって私の味方でいてくれた。私の為にならないような言葉を言われたことなど一度もない。
私が迷わないようにと、悠斗と真央と3人で私を引っ張ってくれた。蓮先輩が私に言ってくれた言葉の中に、嘘や偽りなどは、一つもなかったと思う。
「奏の話を聞いたとき、葵ちゃんはきっと答えを出せる。その話の中に残酷なものもあるかもしれない。葵ちゃんはまた泣くかもしれない。けど、きっと、絶対に、答えが出る。奏に対しての裏切られたって想いにどんな形であれ、必ず終止符を打てる」
だから、私の為でもある、と。
答えを出せるからこそ、会ってほしいと。
「それに、もしかしたら、近い内に奏が会いに行くかもしれない」
「えっ」
「今までの奏は、会いたいけどきっと自分の顔すら見たくないだろうから会いに行けないってウジウジしてたんだよ。けど、さっきの奏ははっきりと会いたいって言ってた」
それは、つまり…
「覚悟…したのかも」
ーーー会いたい
あの言葉は、私に会いに行くと、決意した瞬間だったのかもしれない。
会うべき、なんだろうか。いや、きっと会って奏先輩の口から直接話を聞いてみなければ私はいつまでも引きずったままなんだ。その上、6年前、消えたことに理由があるのならばなおさら。
俯き戸惑う自分の頭に、ふと優しい手が乗せられる。
「ごめん、余計に惑わせた。俺も正直戸惑ってるんだ。あんな形で奏に会うとは思わなかったから」
ごめん、ともう一度言われる。
私は首を振った。
蓮先輩はずっと、どんな気持ちだったのだろう。私を気にかけながらも、奏先輩のことも気にかけて、大変だったのではないだろうか。両方の話を聞いて、両方の想いを知ることは、心苦しかったのではないだろうか。
謝ることなど、一つもないのに。
「今まで話したことは全部俺の気持ち。無理に聞かなくていい。ゆっくり考えな」
「……はい」
この時すでに、答えは出ていたのかもしれない。あの人を前にして真実を知ったとして、自分がどうするのかは分からない。その答えはまだ出ない。