あの日の空にまた会えるまで。
「瑠衣、終わったのか?」
「見りゃわかんでしょー。疲れた」
「お疲れ」
2人を包む空気は酷く優しい。なんだか信頼し合っているのが分かるほどに、2人の互いを見つめる瞳は優しく穏やかだった。
「奏、葵ちゃんと知り合い?」
「前に言った迷子の子」
「え!」
その途端、ガシッと両手を握られた。焦る私に榛名先輩は目をキラキラさせて、まるで面白いものを見つけた時の子どものような顔をしている。
「葵ちゃんが迷子の子!?」
「え、あの…」
「私会ってみたかったの!奏が言ってた迷子の子に!葵ちゃんだったんだねぇー!」
そのままブンブンと両手を上下に振り回される。
「……瑠衣、やめろ。呆気にとられてる」
「あ、ごめんごめん」
悪びれた様子もないその自由奔放さに、本当にこの人は先程まで前に立ってテキパキと周りに指示を出して集会を回していたあの榛名先輩だろうかと、そんな疑問さえ浮かんでくる。
それでも両手は握られたままで、榛名先輩は前のめりになって顔を覗いてくるため私は少し後ずさってしまった。助けを求めるように奏先輩に顔を向けると、呆れた笑みを浮かべていて、それでも私の意図を汲み取った奏先輩がこちらへ手を伸ばしてくる。
「困ってるだろ。やめてやれ」
榛名先輩の肩を掴みグイッと引っ張る。握られていた両手が解放されるのを見た奏先輩が榛名先輩に言う。
「瑠衣、次教室移動だよ。だから迎えにきたんだけど、早く行かないと遅れる」
その言葉にハッとなったのは隣にいた悠斗の方だった。
「やっべ!佐倉、俺らもだよ!早く行こうぜ」
「う、うん」
去り際に奏先輩を見ると奏先輩と目が合う。
「またね、あおちゃん」
「ま、またっ!」
そういって、私も廊下を走り出したーーー。