あの日の空にまた会えるまで。
それから2ヶ月ーーー。
学級委員の集会がある度に、奏先輩と顔を合わせることとなった。いつも幼馴染みである瑠衣先輩を迎えにきたなどの理由で集会が終わる頃にやってきては瑠衣先輩と並んで去っていく。
顔を合わせる度に軽い挨拶とちょっとした世間話をすることはあるけれど、本当にちょっとした、だ。次の授業はなに?とか今日は雨降るよ、とか、本当に些細な会話。それによく喋っているのは瑠衣先輩で、奏先輩は横でニコニコと笑っていることの方が多い。
ーーー幼馴染み。
2人は本当に幼馴染みだけの関係なのだろうか。そう思うことは多々あった。2人を包む空気はまるで兄妹のようでもあり恋人のようでもあった。それに幼馴染みだからと言って男女があんなに側にいるものなのだろうか。幼馴染みのいない私だから分からないだけなのかもしれないけれど、笑顔で並ぶ2人を見ているとそう思わずにはいられなかった。
そして今日も、2人の背中を見つめてそう思う。
あの2人は、本当はーーー。
「あの2人は付き合ってないよ」
2人の背中を見つめる自分に突然の声が降りかかる。
同じく奏先輩と瑠衣先輩の後ろ姿を見つめながら自分のとなりに並び立つのは、3年生の相澤蓮先輩。この人は奏先輩や瑠衣先輩と小学校から同じらしい。
「付き合ってないんスか?あんな一緒にいんのに」
悠斗が問いかけた。
「うん、付き合ってない。でもーーー」
悠斗と2人、蓮先輩の言葉を静かに聞く。蓮先輩の視線は未だにあの2人にあった。
「あの2人は特別だよ」
「特別?」
「恋人とか家族とか、そんな簡単な繋がりじゃない。あの2人の結びつきは誰にも理解できない括りだよ」
「……ますます意味わかんねぇな」
独り言のように呟く悠斗に自分も小さく「そうだね」と返した。少しだけ、チクリと胸に痛みが走ったのには気付かない振りをする。今ならまだ戻れる。そんな誰にも割って入れないほどに強い繋がりで並び立つ2人の邪魔をすることなく、誰も傷付くことなく誰にも気付かれることもなくひっそりと引き返すことができる。
大丈夫。まだ、大丈夫ーーー。