あの日の空にまた会えるまで。


そして2人は、恋人同士だ。

一緒に暮らしていたって不思議じゃないし、その状況では戻ってきた時から一緒なのも仕方がない。

「そう、ですよね。付き合ってますしね…。瑠衣先輩、元気ですか?」
「……付き合ってない」
「え?」
「瑠衣とは付き合ってない」

何を言っているのかと私は顔をしかめた。奏先輩の真っ直ぐに私を見る視線に耐えきれなくて最初に目を逸らしたのは私の方だった。奏先輩の考えていることが、分からない。

付き合ってない?

それを私に言ってどうするの?この状況で納得して信じるとでも思っているのだろうか?私は昔、それで勝手に傷付いていたというのに。

信じて勝手に自惚れた過去があるからか、その言葉を真面目には受け取らなかった。そしてそこに私は特に何も言わないようにした。どうしてそんな嘘をつくのかと問いただしたところできっと納得も理解もできないと思った。

それにもうーーーわざわざ聞くことではないと思ったから。

「そ、そう…ですか」
「信じてないよね?本当だよ。瑠衣とは付き合ってない」
「は、はい…分かりました」

言葉を強くして再度伝えてくる奏先輩に私は戸惑い気味に返答する。

そんな何度も言わなくても、いいのに。

分かってるのに。

奏先輩と瑠衣先輩が、幼なじみという枠を超えた男女の関係だというのはもう、分かってるのに。

そういえば昔、奏先輩と瑠衣先輩の間に流れる空気は家族のようであり恋人のようだったと感じていたのを思い出した。今なら、私が感じていたあの空気はまさに正解だったと分かる。

生まれた時からずっと、2人の世界を築き、2人にしか分からない痛みや涙を共有し、2人だけで生きてきた。だから家族でもあった。

そして、どれだけ痛みを共有しようとも、やはり2人は異性。男と女なのだ。

だから、恋人でもあったと。今ならあの空気が理解できる。


そして、奏先輩が私には理解できないだろうことだと言っていた大部分はきっと、奏先輩と瑠衣先輩の関係にあるのだと、察してしまう自分はなんて頭が冴えているのか。

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