あの日の空にまた会えるまで。
すると、奏先輩が小さく呟いた。
「まぁ、信じてもらえないのも当たり前か」
苦笑しながら呟く姿にふと脳裏に過ぎったのは、昔教室で見てしまった奏先輩と瑠衣先輩のあの姿。
衝撃を受けたあのシーンに少しだけあの時の痛みがよみがえる。寄り添う男女。付き合ってないと言っていた相手とのキス。慣れたことのような自然な会話。あれは確実に恋人同士のソレだった。
あれを見てしまった過去がある以上、付き合ってないという言葉はきっと、私には届かない。
「瑠衣先輩、元気ですか?」
だからこそ、敢えて話題をすり替えた。付き合っていないという奏先輩の言葉を聞かなかったような話題の変え方だったと思う。我ながら狡いと自覚しているけれど、ある意味意思表示でもあったのかもしれない。
信じることはできない、と。遠巻きに伝えているのだから。
そして、そんな私の狡い意思表示に気付かない奏先輩じゃない。切なげに笑った奏先輩に私は目を逸らすことしか出来なかった。
「……うん、元気だよ」
「そうですか。…良かったです」
6年の時を経て、あの日の真実を知った。
あの時は知る由もなかった過去を知った。
ならばもう、話すことは何も無くなったということだ。
終わりの時間が迫ってきていると気付いて、少しだけ、ほんの少しだけキューと胸が苦しくなる。
この時間が終わったとして、私たちはどうなるんだろうか。未練も後悔も無くなりわだかまりも消えて、今度こそ終わりになるんだろうか。顔を合わせたら軽く手を振る程度の、ただの顔見知りとなるのだろうか。
ーーー葵ちゃんはきっと答えを出せる
蓮先輩が言ってくれた言葉に、私は目を伏せた。
私は……ーーー