あの日の空にまた会えるまで。
「……奏先輩」
私の、答えはーーー
「あの日からずっと、私考えてたんです。私の何がいけなかったんだろうとか、どこで嫌われちゃったんだろうとか…」
ただの口約束だったけど、約束を無かったことのように切り捨てて彼女と消えた意味を、真実を知らなかった時の私はずっと考えていた。
でも何度考えても答えは出なくて、思い出すことすら辛くて、もういっそのこと嫌いだと言ってくれてたら諦めはついたんじゃないかとか、終着点のないことばかりが浮かんでは消えての繰り返しで。
「でも今日、知れてスッキリしました。奏先輩がその道を選んでくれて良かったって、今なら思えます」
瑠衣先輩を見捨てない先輩で良かった。
昔と何も変わらない優しい人のままで、良かった。
「私のことは気にしないでください。大丈夫、私には真央や悠斗だっているし、なんなら蓮先輩もいますから。支えてくれる人が、ちゃんといるから」
「……あおちゃん、俺は」
「ーーーだからもう、忘れましょう」
果たされることのなかった約束も、渡されることのなかったボタンも、失ったあの日のことも、全て。
「無かったことにしましょう」
「……」
「お互いそうした方がいいと思うんです。変に気を使って昔を引きずるのはもう、止めにしましょう」
「……それは、他人になるってこと?」
他人…
「他人、とまではいかなくても、ただの先輩後輩で…」
先輩後輩といっても、昔みたいな曖昧な関係じゃない。
世間一般の、中学の先輩と後輩で。他人という道を選ばないのは私はずるいということなのだろうか。けれど、他人ということはどこかで顔を合わせても知らないフリをするということだ。それは違うと思う。逆効果だ。それこそ昔を引きずっていると言える。それならば、ただの先輩と後輩という関係性に落ち着くのが自然というもの。
「じゃあ、どこかでまた会ったら、話しかけてもいい…?」
「もちろん。私も挨拶はしますよ」
変に踏み入った話は、しないけれど。
あくまでも中学の後輩という立ち位置で、挨拶程度に留めるだろうけれど。