あの日の空にまた会えるまで。
交換大学が終わるまであと半年。それまで何もなく終わればそれで良い。
出来るならば、このまま、会わないままで。
「そういえばさ、真央ちゃんが言ってたけど悠斗に彼女が出来そうなんだって?」
「あー…そうみたいですね」
ガラリと変わった話題に思わず笑ってしまった。悠斗と春ちゃんは変わらず2人でよく一緒にいるのを見る。もう付き合っちゃえばいいのに、と思うほど仲が良い。
「真央ちゃん言ってたよ。葵は悠斗に彼女ができていいのかって」
「それ今でもよく言われます。別に良いって言ってるのに」
「真央ちゃんからしたら、ろくでもない奴より悠斗みたいななんだかんだで頼りになる奴を選んで欲しいんでしょ」
「ろくでもない奴?」
「奏とか」
ドキリとした。
そして顔が強張るのを感じた。
「仕方のない理由があったとはいえ、ある意味奏ってたらしのクズじゃん?女の敵だよね。真央ちゃんからしたらそりゃ奏なんて選んで欲しくないでしょ」
「クズって…」
それに私は奏先輩を選んだわけでもなければ悠斗と比べて選んだこともない。それに。
「私、奏先輩には、」
もうあの頃のような好きという気持ちは抱いてない。今抱える気持ちが何なのかを言葉にするのは難しいけれど、これは恋情じゃない。あの頃みたいな淡くて純粋な好きを私は今奏先輩に対して感じてない。
胸が痛むことは、あるけれど。
「真央ちゃんは引き止めようとしてるんだよ、きっと」
「引き止める?」
「葵ちゃんの気持ちが奏に戻ってしまうのを危惧してる。奏に戻ろうとしている気持ちを真央ちゃんは引き止めたいんだ」
じゃないと、また泣いてしまうからーーー
最後の一言には蓮先輩の想いも込められている気がする。
戻ろうとしている?私が、奏先輩に?
「……そんなことない。戻ってないです」
「うん」
「戻って、ないです」
「…うん」
カラン……とメロンソーダフロートの中に入っていた氷が音を立てた。