擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
恋の意識改革
四章 恋の意識改革
香坂社長が来るようになって、YOTUBAでは明らかに変化が起こっている。
まずみんなのデスクが綺麗なまま保たれている。
FAXで流れてきた書類や印刷したファイルなど、ごちゃごちゃに乗せて山になっていた経理課長のデスクでさえ、鬼のように片付けた日以来ちゃんと美しく保たれているのだ。
経理課長が探し物をするたびに、『一緒に探して~』と呼び出されていた亜里沙にとってはうれしいことこの上ない。
あの時間のせいで残業になったこともしばしばあるのだから。
それに今までは副社長ののんびり穏やかな性格のおかげもあって、アットホームな雰囲気だった社内に、香坂社長が来たことによってピンと一本の線が通ったような引き締まった空気が流れている。
業務中に雑談しがちだった社員も仕事に関係すること以外は口にしなくなった。
おかげで亜里沙が彼とのことを根掘り葉掘り訊かれることもない。煩わしいこともなくスムーズに仕事ができるのだ。
そしてもうひとつうれしいことは……。
「失礼いたします。本日もよろしくお願いいたします」
「ああよろしく頼むよ」
経理課長に丁寧なあいさつをしたのは掃除のおばちゃんである。
香坂社長が来てから間もなく、女子社員だけが掃除に時間を取られるのは無駄であるとして、掃除社と契約をしてくれたのだ。
これには女子社員全員が感謝の雄叫びを上げていた。