擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「ええ、完璧な私があなたに劣る点。それしか考えられませんわ。ですから掃除をしながらあなたを観察しましたところ、それほどたいした業務をなさっていないご様子。これならば、私の方がデキます。秘書になって、それを雄大さまに知らしめればいいのですわ。そうすれば身も心も私の虜……」
亜里沙はがっくりと肩を落とした。すべての思考が明後日の方を向いている。
以前冷たく拒絶され、熱烈な恋愛関係にあることを見せつけられたにも関わらず、彼の心を捕らえようとする不屈のエネルギーはどうやったら鎮火できるのか。
連城は敵であるはずの亜里沙になんでも話してくれる。
警戒心がないのか、自分に自信があるのか……少し足りないのか。
「あの、連城さんは、彼のどこが好きなのですか?」
「雄大さまは、以前パーティで私の落としたハンカチを拾ってくださいましたの。優しい微笑みとともに〝落としましたよ〟と仰ってくださって、ひと目で恋に落ちました。ハンカチは亡き祖母からいただいた大切なものです。まだお相手のいない私のために、天国にいる祖母が引き合わせてくれたのだと、運命を感じましたわ」
──それだけで、ここまで執着するなんて。彼の微笑みに破壊力があるのは、同意するけれども。雄大さんも罪作りだ……。
「それからは雄大さまと繋がるように。愛してもらえるように、頑張ったのです」