擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
──だからって、ストーカー的なことをするのは駄目でしょ……。
「ですから、あなたはさっさと身をお引きなさいな。そうしないと、大変悲しい目にあいましてよ。目の前で、この私に、雄大さまを奪われますの!」
連城は自慢げに鼻を鳴らして胸を張った。
「でもまあ、それを眺めるのも一興ですから、そのままおそばにいても構わなくてよ。せいぜい足掻いてみたらよろしいわ。不細工な泣き顔を見るのが楽しみですもの」
連城には成功のビジョンしか浮かばないようで、コロコロと笑う。
亜里沙はムカムカする感情を押えられなくなった。
「それしきのことでは、彼は心を動かされません。連城さんは意識を変えた方がいいと思いますよ」
「あら、負け惜しみですの? 全てにおいて劣っているくせに、よく頑張りますこと」
まだ秘書になってもいないのに勝ち誇ったように言い、お上品にくすくすと笑う。
こんなに思い込みの激しい性格の女性にだけは、彼の妻になってほしくない。
「全然負けてないです! それに負けるつもりもないですから、しっぽを巻いて逃げるのは、連城さんの方ですよ! 思いは実らないんですから、いい加減に諦めてください!」
連城の笑顔がすぅっとなくなり、モンスターの様な目が亜里沙の全身を舐めまわすように動いた。