擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「動物じゃありませんから、あいにくしっぽは生えていませんの。冗談はおよしになって。スタイルも顔も家柄も収入も学校の成績も、なにもかも平凡より下なのに、その妙な自信はどこからくるのかしら?」
モンスターの目にさげすむような色が加わる。亜里沙の身辺を調べたのだろうか、ほんとうに失礼な人だ。
「日々のふれあいからですよ! あなたよりも雄大さんを数倍愛していますし、人間的にとても尊敬していますし、それに……私は、とっても愛されていますから!」
言葉にするのはすごく恥ずかしい。けれどこれだけは連城に言わねばならない。
彼の愛情を受けているのは、今はまだ擬似結婚とはいえ、香坂の妻である自分だけなのだ。
亜里沙は、自分の体をぽんと叩いた。
「この身には、毎日のようにたっぷりの愛情をいただいているんです。なぜなら、私は香坂雄大の妻ですから! だから、彼は絶対に渡しません!」
「なっ、なにを破廉恥なことを仰るの! 下品ですわ」
バンッと秘書デスクに手を突き、わなわなと唇を震わして亜里沙を睨みつけてくる。
これだけ対峙していれば、モンスターのような目にも慣れた。
「その言葉は、そっくりそのまま、お返ししますっ!」
亜里沙は秘書デスクで鬼の形相をしている連城を睨みつけながら、ポケットからスマホを取りだしてアプリを起動させた。そして素早く連城をカメラに収める。
「今、なにをなさいましたの?」