擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
連城の腕を離し、出ていくように促す。けれど、彼女は動こうとしない。
「私利私欲ではございませんの。愛する雄大さまの為ですわ」
なおも食い下がろうとする連城に対し、彼はスマホを取り出してちらつかせた。
「あなたには、なんの権限もない。警察に連行されるか、自分から出ていくか、この二択しかない」
冷徹に言い放つ彼を、連城はキッと見上げた。
「教えてくださいな。才色兼備な私のどこが、平凡以下の彼女より劣っているんですの?」
「全部だ。細部まで言及する必要がないほど、あなたはまったく妻に敵わない。俺にとって亜里沙は最高の女性なんだ。さあ、もう出ていってくれ」
彼はきっぱりと言い放ち、連城は唇を引き結んで涙を零した。
「屈辱ですわっ。こんなの、絶対、ウソですわ!」
前回と同じような台詞を叫ぶように言い、連城は逃げるように社長室から出ていった。
これでもう彼女はあきらめたのだろうか。そう願いたい。
「亜里沙、怖い目に合わせてごめん。痛いところはないか?」
くるりと振り向いた彼が亜里沙の体を心配そうになでる。
「うん、大丈夫。雄大さんが守ってくれたもの。ありがとう」
「実は秘書室に人の気配を感じてて、ずっと様子をうかがっていたんだ。証拠を掴むために出る機会を図っていたら、亜里沙の声が聞こえてきて……」
彼の頬にすうっと赤みがさし、両腕は亜里沙の腰のあたりをそっと囲った。