擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

「あの、それは……つまり、全部聞いていたってことなの?」

 連城を言い負かすためとはいえ、普段ならば決して口にしないような赤面ものの啖呵を切っている。今更ながらに亜里沙の肌がカーッと熱くなった。

 でもあれは亜里沙の本音だ。連城にだけは……違う、誰にも彼を渡したくないのだ。

 一緒に暮らしていて分かったのは、彼の好みや考え方などが亜里沙と同じだということ。

 注がれる愛情も心地よくて、一緒にいるとドキドキするけれど、腕の中はとても安心できて、いざというときにとても頼りになる人。

 そして意外に怖がりなところもある愛すべき人。そんな彼をほかの女性に任せたくない。

 彼の照れ笑いを見つめていると、さらに腰を引き寄せられ、社長室の中に誘導された。

「ありがとう、うれしかった。あの状況で証拠写真を撮る機転も素晴らしい……きみに惚れ直したよ」

「いえ、そんな……たまたま思いついただけで……素晴らしいなんて、恥ずかしいです」

 彼は褒め上手だ。こんなところは社長の手腕のひとつかな、なんて思う。

「何度も言うが、俺の妻は亜里沙しか考えられない。だから、今度ふたりで結婚指輪を買いに行くよ。いいね?」

「……え」

「もう、拒否はさせないよ」

 ときに彼は強引になる。でもそれが今の亜里沙には心地いい。

 彼を愛しているから。

「……はい」
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