擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
返事をすると彼の手のひらが亜里沙の頬を支え、柔らかく唇を重ねられた。徐々に深まっていくキスが彼の愛の深さを伝えてくる。
社長室でキスをするなんて駄目。そう思うけれども、彼の熱から逃れられない。
意識が彼に染まりかけたそのとき、ふいにドアがノックされた。
誰か……おそらく副社長の秘書だ。
「社長? いらっしゃいませんか?」
二度目のノックが響いたとき、彼は名残惜し気に亜里沙の唇から離れた。そして亜里沙を隠すように背中に回す。
「今取り込み中なんだ。後五分たったら来てくれないか」
「承知いたしました」
足音が遠ざかっていき、亜里沙はホッと胸をなでおろす。妻だからここにいても構わないと思うが、彼とキスをしていた後ろめたさがある。
「じゃあ私、仕事に戻ります」
ふわふわした気持ちで笑顔を向けると、彼の微笑みが返ってくる。
今回も連城には驚かされたけれど、そのおかげで彼との絆が深まった気がする。それだけは、いいことだった。