擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
亜里沙ひとりが彼の入れる珈琲を味わえるなんて、ほんとうに贅沢で幸せだと思う。
「うん、おいしい! さすが雄大さん」
にこっと笑いかけると、彼は照れたように微笑む。こんな表情を見られるのも、亜里沙だけだ。
「亜里沙は珈琲の味を分かってくれるから、俺も腕を振るう甲斐があるよ」
こんな素敵な彼と出会えたのは、奇跡なのか運命なのか。リゾート地で珈琲をかけられなければ、今の時間はない。
──運命といえば……。
「連城さんも新しい恋を見つけられたらいいのに」
「そうだな、別の運命の相手に出会ってもらうしかないな」
「じゃあ私、天国にいる連城さんの祖母さんに祈るわ。ほかの男性の前でハンカチ落としてくださいって」
連城のターゲットになった男性には少し気の毒かもしれないけれど、彼のように嫌うのではなく、好きになれればまったく問題ないのだ。
『雄大さまに、この上ない極上の愛とこの美しい肢体……それに喜ばせる技術を披露するつもりでしたの』
あの言葉がほんとうならば、多くの男性にとって、きっと極上の妻になる……はず。
だから決してほかの男性に押し付けているわけではないから、連城の祖母にはどうにかがんばって運命の男性を見つけてやってほしいと切に願う。
──彼にとって私は極上の妻なのかな。彼は……どこもかしこも、とても極上なのだけれど……。
隣でマグカップに口をつける彼をじっと見つめる。