擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

「ああ、でも頑張り過ぎるのも、きみにとってよくないから、ハウスキーパーを雇うことにしようか。週に一度きてもらうだけでも格段に楽になるだろ? やってもらうのは清掃だけだよ」

「清掃……もしも連城さんみたいな人がきちゃったら?」

「以前契約していたところにするから、その点は信用置けるから心配しなくていい。だから契約するよ。大丈夫、留守の間に清掃に入るから、きみが帰宅する頃には終了している。気遣うことはなにもないよ」

 留守の間に他人が入るのは少し抵抗があるし、楽をしているような罪悪感もある。

 けれど、彼が亜里沙のために考えて行動しようとしてくれている。だから素直に喜んで受け入れた方がいいのだ。

 実際、この広い部屋全部を清潔に保つのは、仕事をしている上に掃除が苦手な亜里沙にとっては、大きな負担になっているのだから。

「うん、ありがとう」

「よかった、すぐに契約しておくよ」

 ──掃除といったら……。

 亜里沙はハッと思い出し、再度近付いてきた彼の唇を手のひらで押しとどめた。

「ね、そういえば、社長室のお掃除は誰がしているの?」

 手のひらの向こうに見える彼の表情に、若干の不機嫌さが滲み出ている。

 けれど、亜里沙は知らないふりして言葉を継いだ。

「掃除会社のスタッフなの? それとも副社長の秘書さん?」

「いや……俺がしている」

「えっ、雄大さんが!?」
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