擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 交通費はもちろん、営業が必要に応じて購入した備品などはインターネットで相場の価格を見たりするのだ。それは非常に手間で時間のかかる作業だけれど、毎度手を抜かずに行っている。

 だから申請書を受けて課長の承認を得るまでは、誰も数字の改ざんなどしようがないのだ。

 さらに小口精算する際は承認を受けた後だから、もっと変えにくい。

 それならいつ改ざんが行われたのか。

 ──やっぱり、私が一番に疑われちゃうんだよね……。

 現状、誰にも知られずに申請書を改ざんできるのは、亜里沙しかいない。

 小口現金から改ざんした金額を引き出し、申請者には本来の現金を支払い、亜里沙は差額をポケットに仕舞うという寸法だ。

 経理課長から借りた領収書は、手書きで記載されたもので、しかも複写ではなくボールペンのみ。店の印鑑と発行した人の印鑑があるだけだ。

 それには、あきらかに線がひとつ書き加えられている。

 筆跡が違うから改ざんしたのが丸わかりで、最初の領収書チェックの時すぐに気づくレベルだ。

 亜里沙は深いため息をついた。

 ──でも、どうやったら潔白が証明できるの?

 念のために経理ソフトを確認すると、仕分け台帳には改ざんされた数字が入っていた。

 いつ誰に改変されたのか。
< 158 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop