擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
交通費はもちろん、営業が必要に応じて購入した備品などはインターネットで相場の価格を見たりするのだ。それは非常に手間で時間のかかる作業だけれど、毎度手を抜かずに行っている。
だから申請書を受けて課長の承認を得るまでは、誰も数字の改ざんなどしようがないのだ。
さらに小口精算する際は承認を受けた後だから、もっと変えにくい。
それならいつ改ざんが行われたのか。
──やっぱり、私が一番に疑われちゃうんだよね……。
現状、誰にも知られずに申請書を改ざんできるのは、亜里沙しかいない。
小口現金から改ざんした金額を引き出し、申請者には本来の現金を支払い、亜里沙は差額をポケットに仕舞うという寸法だ。
経理課長から借りた領収書は、手書きで記載されたもので、しかも複写ではなくボールペンのみ。店の印鑑と発行した人の印鑑があるだけだ。
それには、あきらかに線がひとつ書き加えられている。
筆跡が違うから改ざんしたのが丸わかりで、最初の領収書チェックの時すぐに気づくレベルだ。
亜里沙は深いため息をついた。
──でも、どうやったら潔白が証明できるの?
念のために経理ソフトを確認すると、仕分け台帳には改ざんされた数字が入っていた。
いつ誰に改変されたのか。